古民家の暮らしで始まった新しい人生 〜妻とやぎとご近所さんと〜【加藤さん】
古き良きものを楽しむセカンドライフ移住


加藤健次さんは、都市部へのアクセスと自然の豊かさ、そのどちらも大切にできる暮らしを求めて、赤磐市への移住を決断されました。魅力的な古民家との出会いは、のちに「運命的」というほど建次さんの人生を変えていきます。加藤さんご夫婦にこれまでの移住への歩みとその後についてお話を伺いました。
移住の経緯
必然と偶然の先にあった、運命の古民家
健次さんが家探しを始めたきっかけは、健次さんが住んでいた実家にお兄さんが戻ってくることになり、ご自身が新たな住まいを見つける必要があったからでした。当時、健次さんは岡山市内で教員として働いていました。住まい探しは「岡山市内への通勤アクセスが良いこと」と「ほどよい自然がある場所」でしぼり、インターネットで物件を探し、多くの物件に足を運びました。その中で現在のお住まいに出会います。
静かな自然とアクセスの良さが共存する、理想的な場所で
家の周辺には山や田園風景が広がり、前方の道路には岡山市内へ向かうバスが運行していました。さらには建築士や大工も「今ではもう使われていない」と驚くような良質な素材で建てられた古民家に、健次さんは強く惹かれました。
「通勤もできるし、休みの日には自然の中で野菜も作れる。まさに理想的な場所だと感じました」と、当時の思いを健次さんは振り返ります。
家の改修と新たな出会い
購入当時の家は、水回りこそきれいに改修されていたものの、庭や廊下には数十年分の埃や汚れが溜まり、「荒れ屋敷」と呼んでも差し支えないような状態でした。すぐに住める家ではなかったため、健次さんは週末ごとに赤磐へ足を運び、自らの手で少しずつ改修を進めていきました。
平日は大学で教壇に立ち、週末になると赤磐の家に通い、埃を払い、床を磨き、朽ちた箇所を修理する――。元々骨董が好きという健次さんは、楽しみながら家と静かに向き合う時間を重ね、少しずつ「暮らし」の形を整えていきました。
そして、家の改修がひと段落した約1年後、建次さんは淳子さんに出会います。それは偶然のようでいて、まるでこの家が引き寄せたかのような、巡り合わせだったとお二人は言います。淳子さんは当時岡山市内で学芸員をしていたので、通勤できるアクセスの良さや自然豊かな環境、そしてこの家をとても気に入ったそうです。
地域との交流
移住してから、そして今のつながり
移住してしばらくはお二人とも働きに出ていたこともあり、ご近所とはあいさつを交わすくらいの、さりげない関係からのスタートでした。地域の人々は移住者に対して過度な干渉はなく、「適度な距離感」とご夫婦は話します。
その一方で、神社の行事やお祭り、草刈りなどの地域の活動には声をかけていただき、その際には自然なかたちで交流や情報交換が生まれています。
そんな古民家での暮らしに、二匹のヤギとの出会いがさらに大きな変化をもたらしました。旅行先で「子ヤギが生まれたらあげますよ」と聞き、「庭の草を食べてもらえるかも」という軽い気持ちでご夫婦がヤギを飼い始めたのです。すると、そこから自然にご近所さんとの会話が生まれ、地域との交流が一気に活発化しました。
「ヤギをきっかけに皆さんが声をかけてくれるようになった」とご夫婦は笑顔で振り返り、この家が良い流れを作ってくれているようだと言います。
今年の春には子ヤギの「まこちゃん」も産まれて、現在、広い果樹園跡には3匹のヤギが暮らしています。彼らは今や、夫婦と地域とのつながりを育む大切な存在となっています。
ヤギ小屋は友人たちの協力で完成
古き良きものを大切にした暮らしを楽しむ
お気に入りの自転車で赤磐市を走る「気持ちがいいですよ」
日々の暮らしや今後について
今年になって仕事を退職した健次さん。農業は、長い人生の中で少しずつ意識が変わってきたことのひとつです。庭で気軽に始めた家庭菜園でしたが、芽を出し育つ植物に「ちょっと可愛いな」と感じるようになり、その存在が喜びにつながっていきました。
趣味のサイクリングでは、赤磐の自然を肌で感じながら季節の移ろいや風景を楽しんでいます。
淳子さんも約1年前に仕事を辞め、庭になった梅を漬けたり、果物でドライフルーツを作ったりと、日々の中での手仕事を大切にしています。学芸員時代から続けてきたアート作品の制作も、楽しみながらゆっくりと取り組んでいけたらと考えているそうです。
そしてお二人には淳子さんの実家の岡山県勝央町で栽培されている「岡山甘栗」を使って焼栗屋をするという夢があります。旬の時期にだけ味わえる焼き栗を、そのままの甘さで届けたい――そんな想いを今年は形にしようと準備中です。
移住してご夫婦が大切にしたこと
お二人が大切にしたことは、日々の挨拶を欠かさず行い、「自分たちの暮らしや土地にきちんと向き合うこと」。庭の草刈りなどの手入れをして家をきれいに保ち、地域の清掃活動にも自然と参加する中で、少しずつ信頼が築かれていきました。
また、ヤギの存在がご近所さんとの共通の話題になり、会話のきっかけにもなりました。小さな日々の関わりが、地域との距離を少しずつ縮めてくれたようです。
自分たちらしい暮らしを大切にしながら、地域に寄り添って暮らす。その姿勢が、土地に根を下ろしていくうえで大切なのかもしれません。
これからこの地でどんな物語が紡がれていくのか。お二人の穏やかな歩みが、移住を考える方へのヒントとなりそうです。
※取材当時は準備中でしたが、現在は夢だった焼き栗店を11月限定でオープンされています。
取材年月:2025年8月
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総合政策部 政策推進課 地域創生班
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更新日:2025年11月10日