地域の方、両親、夫婦の想いをつないだお餅やさん

赤磐市仁堀地域に「杵戸屋(きねとや)」という小さなお餅やさんがあります。
ご主人の博之さんは仁堀地域に窯を構える備前焼作家さんです。奥様の美加さんは「杵戸屋」を始める以前は、介護福祉士として働いていました。美加さんがお餅屋さんとして起業しようとしたきっかけや、ご夫婦のこれからについてお聞きしてきました。
起業のきっかけについて

プレーンの他に豆餅、よもぎ餅のバリエーションがうれしい
博之さんのご両親は、10年前から畑で米を作りお餅にして販売していました。県外からお嫁に来た美加さんですが、少しづつ農業に携わるようになり、忙しい時にはお餅の製造の手伝いをしていました。しかし、ご両親の高齢を理由にそれらを辞めることになります。
美加さんは、地域で代々続いてきた米作りをここで辞めてしまうことや、餅の販売を喜んでくださるお客様がいることを考えました。それはあまりにも寂しいしもったいないからと、美加さんはお餅作りを引き継ぐことにしました。
美加さんは「どのぐらい販路を広げたら、餅屋として十分やっていけるか」と経営的なことも熟考し、次第に事業を広く展開したいと思うようになりました。そこで思いついたのが、近所の農家さんにお餅にするための米を委託で販売してもらえるように直接交渉すること。地域の農家さんのお米を使うことで品質の管理と共に、生産者の思いの詰まったお餅ができると考えたのです。お米の品種はご両親が作っていた、色の白さとコシの強さが特徴の「ヒメノモチ」に限定しました。
起業を決めたものの、一からの出発だったので支援金を申請しました。「餅なんて売れないだろう」と言われた事もあり苦労したそうです。その後は仕入れ先をつなぐ良い出会いから販路もひろがり、お餅も順調に売れていきました。
「今思えば転機がきていたのかもしれませんね。でも主人がいてくれたからできたんです。」と美加さん。
こうしてご両親からのバトンを引き継ぎ、地域の農家の方々に育ててもらったお米100%の「杵戸屋」のお餅が誕生しました。
備前焼作家の博之さんは言います。「ひとりではできない、みんなに助けてもらってできることです。」
この感謝の思いは窯炊きの時に感じることと共通するそうです。10日間、火を絶やさないようにする窯炊きは、地域の方々に手伝ってもらわないとできない大仕事。人との繋がりを普段から大切にしていることが伝わってきますね。
素朴だけど味がある。無添加お餅と焼き物の共通点とは?

新製品のかき揚げ餅
「あなたのお餅はおいしかったよ!」
とわざわざお客さんから連絡を頂くこともあるという自慢のお餅。
ご両親から受け継いだ昔ながらの製法を大切にしています。
「日にちを持たせ柔らかさを保つために添加物をいれるメーカーもありますが、私は体に悪いものはできるだけ避けたいという思いがあるんです。『杵戸屋』の強みは無添加。賞味期限が短いからこそ、出荷の回転も早くなり鮮度もいい。大手とはまったく逆の発想です。」
「手は抜かず、良いものを作りたいという思い、それは備前焼も同じなんです」と博之さん。買ってきた粘土は使わず、一から土作りをする、このひと手間が良い土味(つちあじ※注1)を作るそう。また使いやすい形にもこだわって作ります。「以前は日本料理を学んでおり、日本料理は素材が大切でどう活かすかが基本。備前焼は土の、お餅は米の、本来の良さを活かしてあげて作る。そんなところが共通しているなと思います。」
使う人の事を考えて作られる焼き物と、安全な食べ物を食べてほしいというお餅からはご夫婦の優しい人柄が感じられました。
現在、杵戸屋の餅の販売は、岡山県内に10店舗以上、赤磐市には山陽マルナカ山陽店、ゆめタウン山陽店、山陽青空市桃の里店、JA吉井特産館(※注2)の4店舗。日頃口にするものとして一度食べてみたいですね。また、赤磐市のふるさと納税の返礼品にもなっています。
※注1/土味とは……粘りや手ざわりなど土の性質を表す陶芸用語
※注2/JA吉井特産館は、お餅の販売のみになります。
長い歴史を知り、もっと好きになった赤磐市


「かつて介護福祉士として働いてた日々は、体力的にも精神的にもハードでした。餅屋として主人と働くようになってからは、自由な時間が増え、好きなドライブや神社めぐりを一緒に楽しむことができるようになり、主人とも以前より仲良くなりました。」と美加さん。今が人生で一番楽しいのだと顔がほころびます。
お二人に赤磐市の好きな所についてお聞きしました。
「歴史があるところですね。」と教えてくださったのは博之さん。
「石上布都魂神社(いそのかみふつみたまじんじゃ)のように、あまり知られていないようで、実は県外の人がたくさん参拝に来るような場所があり、古墳も多い。昔このあたりは岡山の中心だったような所だと最近知って、誇らしく思っています。」
美加さんは、「このあたりは都会の喧騒がないので落ち着いて過ごせるところが気に入っています。星もきれいで心が癒やされます」と教えてくださいました。
最後に・・・
「いつ挑戦しても大丈夫、たとえおばあちゃんになってもやりたいことはやろう」と前向きにおっしゃる美加さんと、隣で優しく微笑む博之さん。もっとたくさんの人に食べて貰えたらと、ふるさと納税を利用し商品が購入できるよう準備を進めている「杵戸屋」としての、これからの抱負を話してくださいました。
お二人の更なる活躍をこれからも期待しています!
【ライター紹介】
moritica
岡山市生まれ。転勤の多い生活を経て、約2年前から赤磐市に定住。
2020年にクラウドソーシング初級講座を受講。
私はどういう働き方をしたいかな?と考えるきっかけになりました。
現在はイラストレーターを目指しながら、デザインやライティングの勉強中。
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総合政策部 政策推進課 地域創生班
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更新日:2023年01月31日