五味太郎さんの絵本を集めた図書館が赤磐に!伝えたい思いとは⁉

国道474号線沿いから山の中腹へ進むと見えてくる看板。

周囲の景色に溶け込みながらもしっかりと存在感を放っている。文字は五味さんの自筆。

看板の先を進むと山小屋風の家が並ぶ。その一番奥がスミカワさんの私室兼図書館(家庭文庫)。
岡山銘菓のパッケージでも知られる作家五味太郎さん(注)の作品を集めた図書館が、赤磐市の仁堀西地区に令和4年3月にオープンしています。
「なんで赤磐に?」「なんで五味太郎さん?」いくつもの「なんでなん?」が浮かびます。オープンさせたのは移住歴5年になるスミカワさん。その謎には、地方に生きる子どもたちへのすてきなメッセージが込められていました。
(注)1945年東京生まれの絵本作家。『さる・るるる』(1979)、『ことばあそび』(1982)など、子どもから大人まで幅広いファンを持ち、海外向けの翻訳本も多数出版されている。
なんで五味太郎さん⁉

絵本『ばく・くくく』(1981)。「五味さんの魅力は、子どもを教育したいと思う大人にこびないところ。」
元々五味太郎さんのファンだった母親の影響で、幼いころから五味さんの絵本に親しんでいたというスミカワさん。そんなスミカワさんが五味さんの絵本の魅力に気づいたのは高校時代。
「例えば、この本(『ばく・くくく』)は、ばくくんの恋の話。強烈な“彼女”が描かれているが、ユルいイラストと語感の面白さで笑えるものになっている。子ども向けとはいえない(笑)。」とスミカワさん。
他にも五味さんの絵本から衝撃を受けた言葉は多く、自然に言葉への興味が芽ばえていったとのこと。辞書も読破するほどの活字好きとなり、学生時代は国語や英語が得意科目に。色彩豊かな絵本の影響か、着物やデザインにも興味を持つようになり、職業選択にも影響したそう。いわばスミカワさんにとって“世界を知るきっかけ”になったのが、五味さんの作品だったのです。
なんで赤磐に⁉

地域に溶け込むことに一役買ってくれたスミカワ家の看板犬。写真は二代目さくらちゃん。犬は苦手だけど、人は大好きなワンちゃんだそう。
大阪生まれのスミカワさんは東京の大学に進み、その後しばらくは、名古屋で働いていました。名古屋を経て、そして赤磐へ。約15年前に田舎暮らしがしたいと、先に赤磐市に移住していた両親と約5年前から同居を始めました。移住後まもなく、国が地域の多様な人材を活用して行っている事業“放課後子ども教室”に参加。季節の行事や体験活動の企画・運営に携わっています。
都会暮らしが長かったスミカワさんは、特に交通の不便さに、子どもたちがかわいそうと感じたそう。どうしても限られた空間に閉じこもりがちになってしまう、と。そこで、「子どもたちが自分の中にないものに触れるきっかけを作りたい。」と思うようになったそうです。スミカワさんが五味太郎さんの作品と出合ったように。
「五味さんの絵本は、自分にとってその先に進むための入門書だった。本をきっかけにして、作者のことを知りたいと思ったり、時代背景について調べたり、世界が広がった。そんな経験を子どもたちにも味わってもらいたい。」
なんで図書館⁉

図書館は畳敷きで、くつろぎながら、絵本と出合える空間。窓からは木漏れ日が射し、ゆったりとした時間が流れます。本のほかに、カードゲームや積み木などの玩具、庭には遊具も備えられています。

『きんぎょがにげた』(1982)。日本語、英語、中国語がそろえられています。
そんな思いが“図書館”という形になったのは、お母さんのひとことだったそう。「母はイベントを企画したりするのが好きで、私に具体化させる(笑)。五味太郎図書館もその一つ。原画展を見に行ったことをきっかけに、長年の妄想が形になりました。だから一応、母が館長ってことになってます。」
五味さんご本人に連絡をとったところ、「五味さんは想像通りの人で、図書館づくりをおもしろがってもらえた。子どもたちのためならと本の寄贈もしてくれました。サイン入りで約80冊。現在450冊以上出版されていますが、元々持っていたものも合わせて350冊ほどが収蔵できました。」そして昨年3月に開館。
「『きんぎょがにげた』という作品があります。金魚鉢を飛び出した金魚を探す絵本で、自分の居心地のいいところを求めて“行動する”ストーリー。もし、今いる場所が退屈だとしたら、楽しく過ごすためにはどうしたらいいか“行動して”ほしい。そんなきっかけづくりができたら。館長(母)曰はく、“何もない”は“伸びしろがある”ってことでもあるから。」
最後に・・・

「自分がもらったものをつないでいきたい」と話してくれたスミカワさん。「どこにいても自分の居場所はつくることができる、世界は広げることができる」を、彼女にとって原点だった五味太郎さんの絵本を集めて、図書館として実現しました。そこには、地方で生きる我々にとって、と
ても心強いすてきなメッセージが込められていました。
※図書館は無料。要予約。来館予約は2日前までにインスタメッセージよりご連絡ください。
instagram @53tarolibrary
ライター紹介
natsukaze
赤磐市在住20年以上。2021年赤磐市主催クラウドソーシング初級講座受講。地域の歴史や頑張っている人たちを通して地元の魅力を発信できたらと、市民ライターの一員に。目指すはNHKのテレビ番組「ブラタモリ」のような情報発信です!
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更新日:2023年02月28日