可能性を切りひらく、人生の旅路でみつけた答え

「僕が博士号をとったのは61歳のころ。それまではサラリーマンで研究ばかりしていたよ。」
にこやかな笑顔で衝撃的な発言をする山本達雄さんは御歳80歳。67歳で仕事をリタイアして、現在は赤磐市で中学校の学習支援員として活動されています。
研究で多忙だったころとは全く違う生活を送っている山本さん。赤磐市で再スタートを切った経緯を伺ってみましょう。
好きが高じて博士号取得、疑問をもつことが正解への道しるべ

高校1年生まで岡山県久米南町で育った山本さん。幼いころから数学と物理が得意だったそうですね。博士号を取得されているといわれましたが、具体的にはどのような研究をされていたのでしょうか?
ー広島大学の工学部を卒業後に勤めた会社からゼオライト(注1)の研究を勧められてね……。それがきっかけで、東北大学の原子核工学科に入って、ずっとゼオライトをベースに研究をしていました。
そして40歳のとき、ゼオライトに銀を入れて抗菌効果が非常に高くなる抗菌性「銀ゼオライト」を開発しました。
当時から好奇心旺盛で、いろいろな会社を渡り歩きいろいろなことを吸収しましたよ。そのおかげで、あるひとに「博士号を取得したほうがいいよ。」と声をかけてもらい、58歳で秋田大学工学資源学部に入り、61歳で博士号を取得しました。
(注1)ゼオライト…ゼオライトは沸石とも呼ばれ、粘土鉱物の一種。特許第128634号「殺菌作用ノ有スル硬水軟化剤ノ製造法」として1938年に発明されていました。現在の抗菌性ゼオライトはゼオライトに銀を主体に亜鉛銅をイオン交換して製造されます。「抗菌性ゼオライトの調製と抗菌効果」参照
思いがけない出会い、赤磐市で第二の人生のはじまり

私たちが日ごろ目にしている抗菌グッズの、抗菌性「銀ゼオライト」を発見したひとが目の前にいるなんて……。目を見張るようなご活躍後、なぜ赤磐市に移住されたのでしょうか?
ーいまから遡ること30年前、新聞で赤磐市桜が丘の売土地の情報が掲載されていてね、そのときに土地を購入していたのです。もともと岡山の人間で、死ぬときは岡山で死にたいと思っていたので、67歳で仕事をリタイアすると同時に赤磐市に移住を決めました。移住したばかりのころは、家でゴロゴロと過ごす日々を送っていました。そんなある日、近くの小学校で小学生の冬休みの宿題を見てくれる学校支援ボランティアを探していたのです。一緒にやらないかと声を掛けてくれた方がいて。
回覧板でも募集案内が回ってきまして、それを見た妻からも「あなたなら小学生に教えられるんじゃない?」と背中を押されました。そして小学生の放課後算数教室で、算数を教えるボランティアをするようになりました。
ボランティアでは勉強だけでなく、竹馬、卓球をして子どもたちと一緒に楽しんでいます。
赤磐市は教育環境や自治体からのサポートが充実しているので、子育て世帯にはおすすめできるまちだと思いますよ。
話した通り、仕事人間だったので子育ては妻に任せて関わってきませんでした。そんな僕にとって、子どもたちとのふれあいは人生で初めての経験であり、いつしか自分自身も子どもたちと一緒に過ごす時間が楽しみになっていました。赤磐市に移住してきて本当によかったです。
間違えていてもいい。なぜ?と疑問を抱くことが大事

いままでの生活から一変して大変なこともあったと思いますが、子どもたちと向き合うときに大切にしていることはありますか?
ー気をつけていることは絶対に叱らないこと。僕は本当は気が短いんだけど(笑)
問題の答えがわからない子どもに対しては、メモ帳に書いて一緒にしていました。どこが分からないのか?なぜそうなるのか?なんでも聞いてくださいという気持ちで……。僕はやりたいことをやってきたけれど、いいことばかりでなく、たくさんの失敗や試練を繰り返してこの年になりました。そこからわかったことは、何ごとも自分からアクションを起こさないと何も始まらないということ。
僕が子どもたちに伝えていることは、間違えてもいいから失敗を恐れずに疑問をもつこと。そうすると必ず答えは出てくるのです。
たくさんの失敗や試練を乗りこえてきた、山本さんの言葉だからこそ重みがありますね。赤磐市で生活するなかでの楽しみや、今後の目標はありますか?
ー楽しみは毎朝、子どもたちの登校を見ることかな。
「行ってらっしゃい。」という気持ちで見守っています。
この子たちが未来を背負っていくんだなぁ……と、うれしい気持ちです。
だからもう少し生きていかないとね。自分の健康に気をつかいながら、子どもたちに僕がもっている能力をできる限り伝えていきたいです。
地域の子ども達は、山本さんから生きるための大切なことをたくさん教えてもらっています。いくつになっても、未来があるからこそ希望をもつことができる。自分の人生を振り返ったとき、わたしも誰かの選択肢の幅を広げてあげられるひとになりたいと思いました。。
最後に・・・
人生を掛けて自身の興味のある道を歩き、努力して夢を実現していった山本さん。老後を過ごすために移住してきた赤磐市が、偶然にも住民による学校支援が活発な地域だったことで、これまでの人生が一変。いつしか地域の子ども達のための活動が山本さんの生きがいに変わっていきました。これからもずっと、このまちの子ども達の成長を見守ってくださいね!
【ライター紹介】
enco
出産を機に故郷である赤磐市に移住。
パートで働きながら、好きなときに好きな場所でクラウドソーシングをしています。
何気ない日常にちょっとだけ”彩り”を添えられるような、新しい働き方を実践中!
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総合政策部 政策推進課 地域創生班
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更新日:2023年03月07日