赤磐ゆかりの詩人永瀬清子さんをもっと知りたくて……

更新日:2023年06月21日

永瀬清子

数々の詩が生み出された赤磐市松木にある生家。入母屋造りの町家として、国登録有形文化財に指定されています。

現代詩の母とも称される永瀬清子さんは、詩壇から遠く離れた赤磐の地で、農業を営みながら、詩作を続けました。その詩は、没後28年を経た今も多くの人を魅了し続けています。ほかでもない赤磐の地で、詩を作り続けた永瀬さんをもっと知りたい。その足跡を訪ねました。

永瀬さんと赤磐のつながりとは……

永瀬清子

永瀬清子展示室があるくまやまふれあいセンターへ。永瀬さんの肖像画がやさしく出迎えてくれました。

永瀬さんは、1906年赤磐市松木で生まれ、父親の仕事に伴い、2歳で金沢へ。金沢、名古屋、大阪、東京での暮らしの後に、赤磐へUターンしたのは39歳のとき。戦後の混乱時に、夫の転勤もあって、3歳になる末子ら4人の子どもたちと自分の生まれた家で暮らし始めました。それから岡山市へ転居する59歳まで、赤磐で暮らしました。

詩作は17歳から。24歳で初詩集を刊行。夫の転勤で上京後は、高村光太郎らと交流を持ちながら、詩壇の中で詩人としての地位を確立していきました。

晩年の詩は、上皇后美智子さまが英訳、朗読されたことでも有名です。また、詩人谷川俊太郎さんとの生涯を通じての交流も知られています。

永瀬さんの詩の魅力は、赤磐とのコラボ⁉

永瀬清子

離れから母屋をのぞむ。離れは談話室と和室に生まれ変わり、永瀬さんをしのぶ空間となっています。

経歴でみると、永瀬さんと赤磐とのかかわりは実質20年ぐらい。といっても、永瀬さんの詩やエッセイには、赤磐の山や川、土地の人が多く登場します(注1)。

その中でも切り離せないのが農業。地域の人に交じって、教わりながら田畑を作ることで、農業が詩作に欠かせないものになっていったようです。

 

二反の田と五寸のペンが私に残った。/詩を書いて得たお金で私は脱穀機や荷車を買った。/もうどちらがなくても成り立たないのだ。/私の詩は農繁期に最も多く降ってくるのだ。/しばらく田へ出ないでいると何も書けなくなるのだ。/牙のある動物が牙を研ぐように/田で働かなくては書けなくなるのだ。(「田と詩」)

 

永瀬さんは、地域の人に苗の植え方を教わる際、物差しを持ち出し、人々を驚かせたそうです。そんな交流も作品の中に描かれており、人々が長い時間かけて体で覚え、伝えてきたものをリスペクトしていたことがうかがえます。

 

(注1)『詩人永瀬清子作品集―熊山橋を渡るー』(編集 熊山町永瀬清子の里づくり推進委員会)には、赤磐にまつわる作品が多く集められている。

没後28年を経た今もつづく永瀬さんを慕う取り組み

永瀬清子

熊山公民館内にもある永瀬清子コーナー。右は白根直子学芸員。

自身の誕生日にこの世を去ったのが1995年。翌年から旧熊山町が始めた「永瀬清子の里づくり事業」では、毎年、詩の朗読会や詩のコンクールなどが開催され、詩をめぐる思いを語り合っています。

永瀬清子展示室では、遺族寄贈の蔵書や原稿、書画、書簡などが展示され、隣接の図書館では、著書や関連図書の閲覧もできます。(詳細は、赤磐市教育委員会熊山分室086-995-1360)

展示室の企画から研究も行う赤磐市教育委員会の白根直子学芸員は、生前最後の朗読会(注2)に出向き、そのまま研究者になったという筋金入りのファン。

「生涯現役で作り続けた作品には、現代においても人生それぞれの時期で共感できるものがある。普遍的な魅力がある。」と力を込めます。

月命日と毎月第3日曜日には生家の清掃、朗読会や詩作講座も開催するNPO法人永瀬清子生家保存会は、SNSでその活動を発信し続け、イベントには岡山県内外からファンが訪れます。(詳細は、保存会070-3783-0217)

また、永瀬さんが手がけた校歌は岡山県下全域におよび、「永瀬さんを語り継ぐ取り組みは多様で、詩の楽しみ方も幅広い。新たな魅力を発見してほしい。」と白根さん。さまざまな方面で、永瀬さんの世界はまだまだ味わいを増していくようです。

 

(注2)1993年、詩人谷川俊太郎さんを招いて開催された。

まとめ

今回赤磐というキーワードを通して、永瀬清子さんに触れてきました。そのことで私自身、赤磐を見る目が少し変わった気がしています。これが白根さんのいう永瀬さんの普遍的な魅力でしょうか。「(永瀬さんの作品には)地域を見直す機会や前向きに自分の生き方を見直すメッセージなどがある。」と白根さん。みなさんも永瀬さんの世界に触れてみませんか。新たな赤磐に出合えるかもしれません。

【ライター紹介】

natsukaze

赤磐市在住20年以上。2021年赤磐市主催クラウドソーシング初級講座受講。地域の歴史や頑張っている人たちを通して地元の魅力を発信できたらと、市民ライターの一員に。目指すはNHKのテレビ番組「ブラタモリ」のような情報発信です!

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