詩の庭
詩の庭とは
赤磐市出身の詩人・永瀬清子の詩作品には100種類を超える植物が登場します。
「詩の庭」には、永瀬清子が創刊・主宰した詩誌「黄薔薇(きばら)」にちなんだ黄色いバラをはじめ、詩に登場する植物を植えています。
「詩の庭」は、平成22(2010)年秋に赤磐市で開催された、第25回国民文化祭おかやま2010・文芸祭「現代詩」大会の関連企画として赤磐市立熊山公民館が整備しました。以来、地域の方に苗や球根をわけていただいたり、草抜きを手伝っていただいたりしながら、約30種類の植物を育てています。
春から初夏にかけては、スミレ、スイセン、ツワブキ、チューリップ、ヒヤシンス、シャガ、フタマタイチゲ、ギボウシ、スズラン、ドクダミ、ボタン、バラ、モッコウバラ、ユキノシタ、アジサイ、キンシバイ、ツルハナナスなど、夏から秋には、オシロイバナ、ケイトウ、マリーゴールド、フジバカマなどが庭を彩ります。
樹木では、ザクロ、ムラサキシキブ(コムラサキ)、ウメ、ロウバイ、ツバキなどの花や実を楽しむことができます。
植物を愛した永瀬清子。「詩の庭」の植物とともに永瀬清子の詩の世界をお楽しみください。
更新日:2021年5月6日
詩の庭の植物
*以下は、植物の名前、登場する作品名、作品が収録されている単行本等の順に記しています。
春から初夏
モッコウバラ
めぐってくる五月には
野ばらの匂いを身につけて
ふたたび私もあたらしくなる
詩「めぐってくる五月には」(『薔薇詩集』)
チューリップ
誰も他の一人についてゆけない
私は瓶の大きなチューリップをみて
不思議な思ひをしてゐた。
詩「孤独」(『グレンデルの母親』)
ボタン
千年も前から人が意匠し描きつづけた牡丹を、私はゆきずりの寺の一株の今年の牡丹によって知る。
短章「貧しき我」(『流れる髪 短章集二』)
オダマキ
目にみえぬその移りや動き 劇 あらそい
おだまきや垂れそめた藤がかたちになりでるときの
急速な変化を私自身に考えられるだろうか
詩「春の花など f 花の美しいのは」
(『続永瀬清子詩集』)
夏から秋
マリーゴールド
つい最近までは矮性のマリーゴールドがそこに
並んで、
植わっていた
秋も終り、花もすんだのでひき抜かれたばかり
もしかしたらその種子がこぼれていて
それが雀たちにはピーナツのようにもおいしいもの
なのか
詩「自然詩集 *マリーゴールド」
(『春になればうぐいすと同じに』)
オシロイバナ
夕ぐれにはおしろいの花が庭中に瞳(め)をさまし
朝には朝顔の花が無慮(むりょ)七十ばかり
垣に余つた蔓(つる)は雨樋(あまどい)に巻きつき
昇り切つて噴水のやうに垂れ下つてゐる。
詩「花」(『大いなる樹木』)
樹木
ウメ
それは二月のなかば。
そのきさらぎのあたらしい空のいろが
特別にその年はうらうらしてゐて
梅の花がうす紅く咲きだしてゐたのだつて。
詩「元日」(『美しい国』)
アジサイ
八重のあじさいは色が深くて
昔、友達に貰った一枝が
あまり美しいので庭の隅に挿木にし
それが今年もたわわに咲くのだ
詩「1988年夏 ii あじさい」(『卑弥呼よ卑弥呼』)
ムラサキシキブ(コムラサキ)
ほかにムラサキシキブも紫の小花をつけたし、物干しのかたわらにも真紅のばらが大輪の花を咲かせ、いまは花の一番多い時だ。
随筆「美を知る人の天国」(『光っている窓』)
ザクロ
美しいものを見た。それはざくろの木だった。東京の宿で朝早く窓をあけた時、それは沢山の実をたらし、宿の庭に立っていた。
短章「ざくろ」(『流れる髪 短章集二』)
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